2011年10月21日金曜日

コーチ交代に関する一考察

浦和レッズが20日にゼリコ・ペトロビッチ監督(以下:ペトロ)の解任を発表し、堀孝史ユース監督の昇格人事を発表しました。
   [浦和レッズ公式:ペトロヴィッチ監督、ボヘルスコーチとの契約解除について]
   [浦和レッズ公式:堀 孝史ユース監督、トップチーム監督就任について]


自分としては、もうスタンドで声や手拍子やフラッグでプレーヤーたちを支えることくらいしかできませんから、このタイミングであれこれ書こうとは思っていなかったのですが、Twitterでツイートしたことや見聞きしたことを振り返って、自分なりに考えをまとめておきたいなと思いまして、下記に書いてみた次第です。


大きくは6つです。
   ・このタイミングでの交代の是非
   ・批判の矢面に立つペトロ
   ・後任監督の選択肢
   ・過去のレッズの監督たち
   ・堀監督に代わっての懸念点とポジティブな変化するであろう点
   ・自分は最後までどのようにするのか



このタイミングでの交代の是非


まずは、残り5ゲームでの交代という点と次節の横浜Fマリノス戦まで50時間程度しか時間がなかったという点を鑑みると、遅きに失したという印象です。

理由としては、替えるタイミングはいくらでもあったと思ったからです。
   ・酷いゲームを見せた5月7日のアウェイ柏戦後
   ・不可解な選手交代からリズムを崩して敗れた6月18日ホーム清水戦後
   ・その清水戦後で、ゲーム間隔が1週間以上空くタイミングだった、6月25日アウェイ
    名古屋戦後
   ・リーグの中断期間が2週間以上あった、8月28日のセレッソ大阪戦後
   ・ホームで圧倒的にポゼッション(62%:日刊スポーツ速報)しながら、
    良い形がつくれず、残留争いをしている山形に9月11日のホームゲームで敗れた後
   ・無得点が4ゲーム続き、点差以上の完敗を喫し、中断期間が2週間あった、10月2日
    アウェイガンバ大阪戦後
   ・残留争いのライバルであるホームの大宮とのダービーを10月15日に落として降格圏に転落した時

個人的にタイミングだなと思えたのは以上のゲーム後でしたが、人それぞれプラスとマイナスがあるかと思います。


そもそも、メディアの前で橋本代表は2度(9月12日柱谷GM解任後、10月15日さいたまダービー後)もペトロを変えないという旨をメディアや公式サイトにて明言していましたから、その4日後というタイミングでの交代というところで、こっちこそ寝耳に水ですよ! という状態でした。

ペトロは大宮戦後に今シーズン限りで辞任する旨、6月の契約延長に関する話し合いの件や補強(予算がなくて補強ができない、エースのエジミウソン放出)の件などでいろいろぶちまけてしまいましたから、ペトロ本人は今後のカンフル剤という目的での発言だったようですが、ここまでいろいろと放言されては、ペトロを交代させないとクラブ側としては示しがつかない状態であったとはいえました。

また、成績面でも8月14日のアウェイ新潟戦から2カ月以上リーグ戦では勝利に見放され、8月以降の成績は1勝2分5敗であること、8月28日のセレッソ大阪戦の78分高崎のゴールからリーグ戦で462分ノーゴールという点からも、カンフル剤としての要素でペトロの解任ということに踏み切ることは悪いことではないと思います。

正直なところ、ナビスコカップでファイナルに進んでいなければ、横浜戦の後で次のゲームまで2週間近く空くというタイミングも十分考えられましたが、ファイナルに進出しているため、変えるならば今回のタイミングが最後の最後だったでしょう。


ただし、柱谷GM解任のタイミングと、大宮戦の翌日に橋本代表とペトロが面談をして、今シーズン中に続投する方向ということで明言されていましたし、それから一転のペトロ解任→堀監督昇格までに5日要していますから、クラブの危機管理に関しては甘かったと言わざるを得ません。
(後任人事に難航し続けたという可能性は考えられますが…)



批判の矢面に立つペトロだってある種被害者


ペトロの在任中は、Wikipediaでちょくちょく悪口が書き込まれたりや浦和駅西口の伊勢丹前にあるフットレリーフに落書きされたりということもありました。

ペトロの志向やコーチングキャリアを見れば、去年までのフォルカー・フィンケさん(以下:フィンケ/現在ドイツリーグのケルンの強化トップ)のフットボール(クラブはReds Styleと表現)からの継続ではなく、刷新に近い内容な上、ペトロのコーチングキャリアはすべて1年以内で、監督を務めたのはポルトガルのボアヴィスタとオランダのRKCヴァールヴァイク(2部)のみですから、去年までやってきた戦い方での上積みでなければ、失敗する可能性は非常に高かったことは分かります。

[参考:ペトロのコーチングキャリア]
   ・2004-2005 フェイエノールト・ロッテルダム(オランダ1部) アシスタントコーチ
             3→4位 翌年3位
   ・2006.8-10 ボアヴィスタFC(ポルトガル1部) コーチ
             6→10位 翌年9位
   ・2007-2008 RKCヴァールヴァイク(オランダ2部) コーチ
             1部17位→2部2位 PO敗退 翌年昇格
   ・2008-2009 ハンブルガーSV(ドイツ1部) アシスタントコーチ
             4→5位 翌年7位
   ・2010.8-11 ウェストハム・ユナイテッド(イングランド1部) アシスタントコーチ
             17→20位 翌年2部参戦中


また、ペトロが担当していた年よりも前年と翌年のほうがだいたい成績がよいこともあり、世界的に取得が難しいと言われているオランダのコーチングライセンスを保持しているとはいえ、就任当時からコーチとしての力量には疑問符がありました。

クラブはペトロの戦術的志向がレッズ(フィンケが2年間やってきたスタイルに近いもの)と合うかどうか、マネジメント力があるかどうかをしっかりリサーチ・ヒアリングしなければいけないことは明白でした。

それなのにもかかわらず、映像もチェックせずに連れてきていることを柱谷GM(当時)がコメントしている点、オフィシャルサイトのニュースリリースでキャリアを一部間違えて記載している点[参照:浦和公式]で、クラブ側からペトロへのヒアリングやチェックが甘かった(または怠っていた)ということは容易に推測できます。

去年までは往々にしてあった、スポーツ紙各社などによるネガティブ要素な記事が、ペトロに代わってからはほとんど見かけなくなった点においても、ペトロがうまくコントロールできていたと考えることもできますが、フィンケを追い出したい勢力がいたのではないかとも考えられます。
その点で、クラブはフィンケを切って、新たなコーチを就任させる前提で、ペトロへ水面下でアプローチしていたことが想像できます。


また、ペトロが志向するフットボールとレッズの選手層がかみ合わないですから、ある程度プレーヤーを入れ替えないと、ペトロの理想とするフットボールは花開かなかったことは当然と言えば当然ですし、ペトロも補強のリクエストができない状況下で指揮していたことからも、今シーズンがうまくいかない可能性のほうが高かったのが現実です。

その象徴的なトピックとしては、浦和レッズマガジンでのインタビューで「永田は合わない」という旨をコメントしていたことです。
(リーグ戦でフルタイム出場を続ける永田は頑張っています。)

ペトロは志向に合った選手層を与えられず、補強のリクエストも叶わなかったわけですから、ペトロが理想としていたフットボールを具現化するには相当困難な状況だったことはわかります。
(ただ、ペトロも選手層や前年までの戦い方を見て、もう少し柔軟にできたのではないかなとも思いますが…)


もちろん、公の場で監督という立場の者がちょくちょく選手批判をすることや記者とやり合ったりということもありましたから、ペトロのコーチとしてのパーソナリティには疑問符がつくことは確かではありました。



選択肢はあまりにも少なかった…


コーチの交代においてクラブ内人事で考えうる方法は、
   (1)アシスタントの昇格 → ペトロが連れてきていて、今回は同時に退任しているため
               (アドリエ・ボヘルスさん)、選択肢としては考えられない
   (2)ユースかセカンドチーム監督の昇格 → サテライトチームを見ていた広瀬さんか
                       ユース監督の堀さんを昇格させる
   (3)強化トップの兼任 → GM職ですが、9月に柱谷GMが解任され、山道代行に交代し
               ており、プロでの指導経験がない山道代行が指揮を取ること
               は選択肢としては考えられない
   (4)クラブその他セクション → ライセンス保持者はハートフルクラブの池田太さんと
                  落合弘さんとレディースチームの村松浩さんのみ
   (5)フリーなクラブOB → Jリーグで指揮をとるのに必要なS級ライセンス保持者では
               福田正博さんしかいなかった?
と大きく5つあります。

それに加えて、外部からの招へいが選択肢となるわけですが、どこの海外リーグもだいたいはシーズン中ですから見つけにくいですし、残り5ゲームで降格圏にいるという、いわば火中の栗を拾うことになるチームとなると、よほどな自信がない限りは就任には二の足を踏むでしょう。

そういった点からも、人事はクラブ内からになったのでしょうし、そうなることはやむを得ないことだと思います。

レッズに在籍していて、Jリーグの指揮を執るのに必要なS級ライセンス保持者というと、アカデミー(ユース:U-18)監督の堀孝史さん、レディースチーム監督の村松浩さん、ハートフルクラブのキャプテン(普及トップ)の落合弘さんと池田太さんしかいませんでした。

落合さんは、日本代表やレッズなどのコーチ経験はありますが、94年シーズンを最後に現場から離れています。

池田さんはファーストチームでのコーチ経験が2002-08年で7年間ありますが、ライセンスの獲得は今年な上、監督経験はありません。

村松さんはレディースチームがシーズン中な上に、99年を最後にプロチームのコーチはしていません。


そうなると、S級ライセンスを持っていないため、リーグに特例措置を認めてもらうことで、主にサテライトチームを担当していた広瀬さんを昇格させるか、アカデミーを率いている堀さんを昇格させるしか手立てはありませんでした。

S級ライセンス保持者に限れば、堀さんしか選択肢はなかったのでしょう。

変えるタイミングに関しては、前述の通りでもっと前に踏み切ってよかったでしょうが、クラブ内部からでやるとすれば、消去法の要素も強いですが、最善の策だったのではないかと思います。


ただし、レッズの未来を担うプレーヤーたちが集う、アカデミーチームの人事が未定で、プレミアリーグでは先週に残留を決めたものの、今週からクラブユース選手権のグループリーグが始まることを考えると、アカデミーチームから監督とコーチをそれぞれ引き上げたことで、アカデミーには大きな負担と迷惑をかけているのが現状です。

しかも、ユースでコーチを務めていた天野さんを堀さんのアシスタントとして昇格させていますが、天野さんはレッズのアカデミーに携わる前は一貫してFC東京の育成年代をコーチしてきた方で、今回の昇格人事により、はじめてプロチームでのコーチとなります。

上記2点を踏まえて、天野さんをアカデミーに残して、アカデミーの監督に昇格させれば、アカデミーの後任が未定という事態は防げたのじゃないかと、個人的には思いました。



19年ちょっとで18人目


レッズの公式戦を戦い始めた1992年9月から今日までで、レッズを率いるのは堀さんでのべ18人目になります。

3年続いたのがギド・ブッフバルトさん(2004-06)のみ、2年続いたのもホルガー・オジェックさんの1回目(1995-96)とハンス・オフトさん(2002-03)とフォルカー・フィンケさん(2009-10)の3人です。

総監督と代行の2人を除けば、平均在任期間は14.93カ月という期間になります。
J1リーグ在籍チームでも、1,2を争う短さではないでしょうか。

チームスタイルが監督が変わるたびに大きく揺れ動くこともしばしばです。
これが、フィロソフィーの確立になかなかつながらない元凶であるのではないかと個人的には考えます。


そして、日本人監督としては11年ぶりとなります。

[参考:浦和レッズの日本人監督一覧]
   (1)森孝慈さん   [92.9-94.1](故人/元日本代表監督、横浜M・浦和・福岡で監督・GM)
   (2)横山謙三さん  [94.2-95.1] (元日本代表監督)
   (3)原博実さん   [98.2-99.6] (現:JFA技術委員長)
   (4)吉田靖さん:代行 [99.12-00.1](現:U-18日本代表監督)
   (5)斉藤和夫さん  [00.2-00.10](三菱時代唯一の2部シーズンの監督、
                    監督としての肩書は2001年1月まで)
   (6)横山謙三さん  [00.10-01.1] (元日本代表監督、総監督として)



堀孝史監督に代わっての懸念点と良くなるだろうという点


プレーヤーからも初練習後にポジティブなコメントが聞かれるなど、ここでの交代はうまくいきそうな雰囲気もありますが、懸念点をあげるとすれば、堀さんのプロチームでのコーチングキャリアが2004年J2だった湘南ベルマーレでコーチだった1年というところでしょうか。

2002年からコーチングキャリアをスタートさせた堀さんは、その2004年を除いて、一貫して育成年代のコーチを務めてきましたから、プロでの指導経験の少なさがネガティブに働かなければいいなと思っております。

堀さんになって良くなるだろうという点はムードを一変させられる点、時間が限られているとはいえ選手特性に合わせたシステムや戦術の整備が進むことが考えられる点、アカデミー出身プレーヤーを良く知っている点であると思います。


いわば、火中の栗を拾う役目、いやそれ以上の非常事態での監督就任となった堀さんを降格監督にはできないなって、改めて思います。

ですから、浦和レッズ将来を背負って、厳しい環境下で残留というミッションへ取り組む堀さんを全力で支えなければと思っています。



自分はどうする?


自分にできることはホントに限られています。

   ・残り試合のスタンドに浦和レッズの援軍として足を運ぶ
   ・スタンドでより一層の声や手拍子やフラッグでプレーヤーたちを後押しすること
   ・REDSが好きだったとか関心があるけど、スタジアムへ行かなくなった
    (行ったことがない)という人にもう一度声をかけて、スタジアムへ足を
    運んでもらえるように誘って(働きかけて)みること

ほかにもいろいろあるでしょうけど、現在の自分が考えることができることは上記くらいでしょうか。


フットボールには心理ゲームな面があると思いますし、スタンドでつくれる部分もあると思います。

当然、自分もですが、より一層の声や手拍子で後押ししていくという決意を新たに、これからの1カ月あまりの闘いに臨んで行こうと思います。

いろいろなことがあった今シーズン、12月3日の埼玉スタジアムでは、J1残留で笑っていたいですね。

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